「環境への負荷を減らすなら、コストの話と同じではないのですか」
「予備を多めに持っておくほうが安全なので、台数は減らしたくありません」
AWS Certified Cloud Practitioner(試験コード CLF-C02。以下 CLF)では、Well-Architected フレームワークの持続可能性の柱の設計原則を、具体的な取り組みから見分ける問題が出ます。柱の名前が出てこない選択肢でも、「使われていないリソースを減らす」かどうかが決め手になります。
この記事は、CLF の練習問題を1問ずつ解説する連載の第9問です。問題は筆者が試験の範囲に合わせて作ったもので、実際の試験の問題ではありません。まず自分で答えを選んでから、解説を読んでください。
▶ この回の内容は、YouTube の動画(約5分)でも見られます(記事の最後にも埋め込んであります)。
問題
ある企業は、環境への負荷を減らすことを経営の目標に掲げ、AWS 上のワークロードを見直しています。AWS Well-Architected フレームワークの持続可能性の柱の設計原則に沿った取り組みはどれですか。(2つ選択)
- A. 将来の需要に備えて、ピーク時の台数の EC2 インスタンスを常に起動しておく
- B. 新しい世代のインスタンスは検証の手間がかかるため、今の世代を使い続ける
- C. 自社で管理するサーバーの代わりに、AWS Fargate などのマネージドサービスを使う
- D. すべてのリージョンにワークロードを複製し、常に稼働させておく
- E. 使用率の低いインスタンスのサイズを適正化し、使っていないリソースを削除する
答えを2つ決めたら、下を開いてください。
正解を見る(クリックで開きます)
正解:C と E
C は「マネージドサービスを使用する」、E は「使用率を最大化する」という、持続可能性の柱の設計原則です。どちらも、必要なインフラやエネルギーの合計を減らす取り組みです。
正解は C と E
正解は C と E です。
- C:マネージドサービスを使用する、という設計原則
- E:使用率を最大化する、という設計原則
持続可能性の柱は、2021年に6本目の柱として加わりました。ここから、選択肢を1つずつ見ていきます。
選択肢ごとの解説
A:常にピーク台数ではアイドルが増える(誤り)

図の左のように、ピーク時の台数を常に起動しておくと、需要が少ない時間は、多くのインスタンスが使われずに動き続けます。赤い部分が、アイドル状態のリソースです。
図の右のように、Auto Scaling で需要に合わせて台数を増減させるのが、設計原則に合います。
B:効率のよい新しい世代を採用する(誤り)

設計原則の1つに、より効率的なハードウェアやソフトウェアの新製品を予測して採用する、があります。インスタンスは、新しい世代ほど、効率のよいハードウェアになっていきます。新しい世代へすばやく移れるように、柔軟な設計にしておきます。
検証の手間を理由に、今の世代を使い続けるのは、この原則の逆です。
C:マネージドサービスでインフラを共有(正解)

マネージドサービスを使用する、という設計原則です。
図の左のように、利用者ごとにサーバーを用意すると、それぞれが余裕を持って動き、全体では多くのインフラが要ります。図の右のように、AWS が大規模に運用するサービスを多くの利用者で共有すると、必要なインフラが減ります。AWS の資料では、AWS Fargate が例に挙がっています。
D:必要以上の複製はリソースを増やす(誤り)

すべてのリージョンにワークロードを複製し、常に稼働させると、リソースの量が、リージョンの数だけ大きく増えます。
可用性や復旧の要件に合わせて、複製の範囲を決めます。冗長性は、要件に見合う分だけにするのが、持続可能性の考え方です。
E:使用率を上げ、アイドルを無くす(正解)

使用率を最大化する、という設計原則です。
AWS の資料では、図の左のように、使用率 30% のホスト2台より、使用率 60% のホスト1台のほうが効率がよい、という例が挙がっています。大きすぎるインスタンスのサイズを適正化し、使っていないリソースを削除すると、必要なエネルギーの合計が減ります。
持続可能性の柱の6つの設計原則
持続可能性の柱の6つの設計原則を整理しておきます。今回の正解は、使用率を最大化することと、マネージドサービスを使用することの2つでした。表の「—」は、今回の選択肢に出てこなかった原則です。
| 設計原則 | 今回の選択肢 |
|---|---|
| 影響を理解する | — |
| 持続可能性の目標を設定する | — |
| 使用率を最大化する | 正解:サイズの適正化・アイドルの削除/誤り:常にピーク台数で起動 |
| より効率的なハードウェアやソフトウェアの新製品を予測して採用する | 誤り:今の世代を使い続ける |
| マネージドサービスを使用する | 正解:AWS Fargate などを使う |
| クラウドワークロードのダウンストリームの影響を軽減する | — |
ポイント
- サイズの適正化・アイドルの削除 → 使用率を最大化する
- AWS Fargate などの共有のサービス → マネージドサービスを使用する
- 「いつも最大で用意しておく」「今の世代のまま」は 誤りの合図
持続可能性の柱の考え方と、コスト最適化の柱との見分け方は、講座の記事で詳しく解説しています。
講座の全14回は、連載の入口のページから順に読めます。
動画で見る
この回の内容を、YouTube の動画(約5分)でも解説しています。
連載の全回は、YouTube の再生リスト「CLF-C02 試験対策問題」にまとめています。
連載「CLF-C02 試験対策問題」
全回の目次と、読む順番・目的別の読み方は、CLF-C02 試験対策問題の入口のページにまとめています。
- 第1問 初期費用をかけずに始めるコストの利点(従量課金・規模の経済)
- 第2問 数分でグローバルに展開(世界同時公開と低い遅延)
- 第3問 高可用性(EC2 の複数 AZ 配置と RDS マルチ AZ)
- 第4問 クラウドの俊敏性(数分で作成・すぐに削除)
- 第5問 責任共有モデル(EC2 へのリホストで AWS に任せられること)
- 第6問 数時間だけのアクセスのピークに備える(EC2 Auto Scaling・オンデマンド)
- 第7問 Well-Architected の6つの柱(信頼性・パフォーマンス効率)
- 第8問 信頼性の柱の設計原則(自動で復旧・水平方向のスケール)
- 第9問 持続可能性の柱の設計原則(使用率の最大化・マネージドサービス)(この記事)
- 第10問 AWS CAF の変革ジャーニーのフェーズ(構想・連携・ローンチ・スケール)
- 第11問 AWS CAF のパースペクティブ(構成管理・パッチ管理はオペレーション)
- 第12問 移行のビジネスケース(Migration Evaluator)
- 第13問 AWS CAF のパースペクティブ(役割と組織の変化は人材)
- 第14問 サーバーをそのまま EC2 に移す(AWS Transform MGN)
- 第15問 ファイルの移行(AWS DataSync)
- 第16問 移行戦略の7つの R(リパーチェス・SaaS への乗り換え)
- 第17問 適切なサイズ設定(CPU は余り、メモリが不足)
- 第18問 責任共有モデル(Lambda と RDS)
- 第19問 最小権限の原則(IAM のポリシーと SCP)
- 第20問 責任共有モデル(EC2 と S3、AWS の責任)
- 第21問 共有統制の例(責任共有モデルの IT 統制)
- 第22問 コンプライアンスの資料と契約(AWS Artifact)
- 第23問 脅威の検出(Amazon GuardDuty)
- 第24問 脆弱性の継続的なスキャン(Amazon Inspector)
- 第25問 S3 の機密データの検出(Amazon Macie)
- 第26問 S3 の保管時の暗号化とキーの管理
- 第27問 だれが操作したかを調べる(AWS CloudTrail)
- 第28問 IAM ユーザーの認証情報の一覧(認証情報レポート)
- 第29問 EC2 のアプリケーションに権限を与える(IAM ロール)
- 第30問 データベースのパスワードの自動ローテーション(AWS Secrets Manager)
- 第31問 社員に一時的な認証情報を発行するサービス(AWS STS)
- 第32問 ルートユーザーでなければできない作業(アカウントの閉鎖・メールアドレスの変更)
- 第33問 アプリの会員のサインインとソーシャルログイン(Amazon Cognito)
- 第34問 同じ IP からの大量のリクエストを止める(AWS WAF のレートベースのルール)
- 第35問 追加料金なしの DDoS 保護(AWS Shield Standard)
- 第36問 他社のソフトウェアを AMI で使う(AWS Marketplace)
- 第37問 インストールなしでブラウザから AWS CLI を使う(AWS CloudShell)
- 第38問 同じ構成の環境をコードで何度でも作る(CloudFormation・CDK)
- 第39問 工場の中で AWS のサービスを動かすには(AWS Outposts)
- 第40問 世界の利用者の近くでキャッシュして配信(Amazon CloudFront)
- 第41問 コードを上げるだけで Web アプリを動かすサービス(AWS Elastic Beanstalk)
- 第42問 サーバーを管理せずにコンテナを動かす(AWS Fargate)
- 第43問 URL のパスで振り分けるロードバランサー(Application Load Balancer)
- 第44問 つながりを何段もたどるグラフデータベース(Amazon Neptune)
- 第45問 RDS の自動フェイルオーバーと読み取りの分離(マルチ AZ・リードレプリカ)
- 第46問 サーバーの管理なしにアクセスの増減に合わせるデータベース(Amazon DynamoDB)
- 第47問 セキュリティグループの特徴(ステートフル・インスタンス単位)
- 第48問 障害のときだけ別のリージョンへ DNS で切り替え(Route 53 のフェイルオーバールーティング)
- 第49問 今あるインターネット回線で、すぐに暗号化してつなぐ(AWS Site-to-Site VPN)
- 第50問 一部の管理者だけは解除できる削除の保護(S3 オブジェクトロックのガバナンスモード)


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