「責任共有モデルは AWS と利用者で分担するものだと分かっていても、問題になると、どこまでが AWS の仕事なのか迷います」
「『自社で管理できる』と『自社で行う必要がなくなる』は、どちらも似たように見えて、どちらが正しいのか分かりません」
AWS Certified Cloud Practitioner(試験コード CLF-C02。以下 CLF)では、EC2 へ移したときに、AWS に任せられることと、利用者に残ることを見分ける問題がよく出ます。移行の場面を使って、責任共有モデルの境目と、誤りの選択肢によく出る言い回しの向きが問われます。
この記事は、CLF の練習問題を1問ずつ解説する連載の第5問です。問題は筆者が試験の範囲に合わせて作ったもので、実際の試験の問題ではありません。まず自分で答えを選んでから、解説を読んでください。
▶ この回の内容は、YouTube の動画(約4分)でも見られます(記事の最後にも埋め込んであります)。
問題
ある企業は、オンプレミスで動かしている Web サーバーを、Amazon EC2 にそのまま移行(リホスト)することを検討しています。移行によって企業が得られる利点はどれですか。(2つ選択)
- A. データセンターの入退館の管理などの物理的なセキュリティを、自社で行う必要がなくなる
- B. EC2 インスタンスのゲスト OS のセキュリティパッチを、AWS が自動で適用する
- C. 故障したディスクやサーバー部品の交換を、自社で行う必要がなくなる
- D. EC2 に保存したデータの暗号化とアクセス管理に、AWS がすべての責任を持つ
- E. 移行するだけで、アプリケーションの性能の問題がすべて解消する
答えを2つ決めたら、下を開いてください。
正解を見る(クリックで開きます)
正解:A と C
A の物理的なセキュリティと、C の故障したディスクや部品の交換は、どちらも責任共有モデルで AWS の責任になる部分です。利用者は、これらを自社で行う必要がなくなります。
正解は A と C
正解は A と C です。
- A:データセンターの物理的なセキュリティは、AWS の責任
- C:故障したディスクやサーバー部品の交換は、AWS が行う
どちらも、責任共有モデルで AWS の責任になる部分です。ここから、選択肢を1つずつ見ていきます。
選択肢ごとの解説
A:物理的なセキュリティは AWS の責任(正解)

図の左のように、オンプレミス(自社でサーバーを持つ形)では、入退館の管理や監視、警備を、自社で行います。AWS に移行すると、データセンターの物理的なセキュリティは、AWS の責任になります。利用者は、これを自社で行う必要がなくなります。
B:ゲスト OS のパッチは利用者の責任(誤り)

図は、Amazon EC2 の場合の責任共有モデルです。AWS はクラウド「の」セキュリティ、利用者はクラウド「における」セキュリティを担当します。
物理設備からハイパーバイザー(仮想化の基盤)までは、AWS の責任です。その上のゲスト OS は、利用者の責任です。ゲスト OS のセキュリティパッチは、利用者が適用します。AWS が自動で適用することはありません。なお、Amazon RDS などのマネージドサービスでは、OS のパッチは AWS が適用します。
C:故障した部品の交換は AWS が行う(正解)

ハードウェアの調達や設置、故障したディスクやサーバー部品の交換は、AWS が行います。利用者は、ハードウェアの保守を、自社で行う必要がなくなります。
D:暗号化とアクセス管理は利用者(誤り)

データを暗号化するかどうかの設定や、だれがアクセスできるかの管理は、利用者の責任です。アクセスの管理には、IAM やセキュリティグループを使います。
AWS は機能を提供し、それをどう使うかを決めるのは利用者です。AWS がすべての責任を持つわけではありません。
E:性能の問題は残る(誤り)

リホストは、アプリケーションをそのまま EC2 に移す方法です。図のように、アプリケーション自体に性能の問題があれば、移したあとも残ります。移行するだけですべて解消する、という保証はありません。
言い回しの向きに注意

誤りの選択肢によく出る言い回しを、図の左の項目ごとに、誤りと正しいものを並べて整理しておきます。
- 物理的なセキュリティ:「自社で管理できる」は誤り、「自社で行う必要がなくなる」が正しい
- ゲスト OS のパッチ:「AWS が自動で適用する」は誤り、「利用者が適用する」が正しい
- 暗号化とアクセス管理:「AWS がすべての責任を持つ」は誤り、「利用者が設定する」が正しい(AWS は機能を提供する側)
- 性能の問題:「すべて解消する」のような言い切りは誤り、「アプリケーション自体の問題は残る」が正しい
ポイント
- 物理的なセキュリティ・ハードウェアの保守は AWS の責任
- EC2 の ゲスト OS のパッチ、データの暗号化とアクセス管理 は利用者の責任
- 「自社で管理できる」は誤り、「自社で行う必要がなくなる」は正解
責任共有モデルの境目と、サービスによる責任の変わり方は、講座の記事で詳しく解説しています。
講座の全14回は、連載の入口のページから順に読めます。
動画で見る
この回の内容を、YouTube の動画(約4分)でも解説しています。
連載の全回は、YouTube の再生リスト「CLF-C02 試験対策問題」にまとめています。
連載「CLF-C02 試験対策問題」
全回の目次と、読む順番・目的別の読み方は、CLF-C02 試験対策問題の入口のページにまとめています。
- 第1問 初期費用をかけずに始めるコストの利点(従量課金・規模の経済)
- 第2問 数分でグローバルに展開(世界同時公開と低い遅延)
- 第3問 高可用性(EC2 の複数 AZ 配置と RDS マルチ AZ)
- 第4問 クラウドの俊敏性(数分で作成・すぐに削除)
- 第5問 責任共有モデル(EC2 へのリホストで AWS に任せられること)(この記事)
- 第6問 数時間だけのアクセスのピークに備える(EC2 Auto Scaling・オンデマンド)
- 第7問 Well-Architected の6つの柱(信頼性・パフォーマンス効率)
- 第8問 信頼性の柱の設計原則(自動で復旧・水平方向のスケール)
- 第9問 持続可能性の柱の設計原則(使用率の最大化・マネージドサービス)
- 第10問 AWS CAF の変革ジャーニーのフェーズ(構想・連携・ローンチ・スケール)
- 第11問 AWS CAF のパースペクティブ(構成管理・パッチ管理はオペレーション)
- 第12問 移行のビジネスケース(Migration Evaluator)
- 第13問 AWS CAF のパースペクティブ(役割と組織の変化は人材)
- 第14問 サーバーをそのまま EC2 に移す(AWS Transform MGN)
- 第15問 ファイルの移行(AWS DataSync)
- 第16問 移行戦略の7つの R(リパーチェス・SaaS への乗り換え)
- 第17問 適切なサイズ設定(CPU は余り、メモリが不足)
- 第18問 責任共有モデル(Lambda と RDS)
- 第19問 最小権限の原則(IAM のポリシーと SCP)
- 第20問 責任共有モデル(EC2 と S3、AWS の責任)
- 第21問 共有統制の例(責任共有モデルの IT 統制)
- 第22問 コンプライアンスの資料と契約(AWS Artifact)
- 第23問 脅威の検出(Amazon GuardDuty)
- 第24問 脆弱性の継続的なスキャン(Amazon Inspector)
- 第25問 S3 の機密データの検出(Amazon Macie)
- 第26問 S3 の保管時の暗号化とキーの管理
- 第27問 だれが操作したかを調べる(AWS CloudTrail)
- 第28問 IAM ユーザーの認証情報の一覧(認証情報レポート)
- 第29問 EC2 のアプリケーションに権限を与える(IAM ロール)
- 第30問 データベースのパスワードの自動ローテーション(AWS Secrets Manager)

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