「AWS のメリットは6つあると覚えたのに、問題文がちがう言い方になると、どれのことか分からなくなります」
「コストの利点は『安くなる』だと思っていましたが、選択肢がどれも安くなりそうに見えて迷います」
AWS Certified Cloud Practitioner(試験コード CLF-C02。以下 CLF)では、AWS が挙げるクラウドの利点を、問題文の場面から見分ける問題がよく出ます。用語そのものは出てこず、「初期費用」「大量に調達」のような言い換えで問われるのが特徴です。
この記事は、CLF の練習問題を1問ずつ解説する連載の第1問です。問題は筆者が試験の範囲に合わせて作ったもので、実際の試験の問題ではありません。まず自分で答えを選んでから、解説を読んでください。
▶ この回の内容は、YouTube の動画(約5分)でも見られます(記事の最後にも埋め込んであります)。
問題
あるスタートアップ企業は、新しい Web サービスを立ち上げる予定です。手元の資金が限られているため、サーバーの購入に大きな初期費用をかけたくないと考えています。AWS クラウドを採用することで得られる、コストに関する利点として正しいものはどれですか。(2つ選択)
- A. 利用者ごとに専用の物理サーバーが必ず割り当てられるため、費用が下がる
- B. 購入したハードウェアの減価償却の期間を、自社で長く設定できる
- C. 使用量に関係なく毎月同じ料金を支払うため、予算を固定できる
- D. AWS が大量に調達・運用するため、利用者は低い単価の恩恵を受けられる
- E. サーバーを購入する初期投資の代わりに、使った分だけ支払える
答えを2つ決めたら、下を開いてください。
正解を見る(クリックで開きます)
正解:D と E
D は「規模の経済」、E は「固定費(資本費)を変動費に置き換える」利点です。どちらも、AWS が挙げるクラウドの6つの利点のうち、コストに関わるものです。
正解は D と E
正解は D と E です。
- D:AWS の大量の調達で単価が下がる、規模の経済
- E:初期投資の代わりに使った分だけ支払う、固定費の変動費化
どちらも、AWS が挙げるクラウドの6つの利点(Six advantages of cloud computing)のうち、コストに関わるものです。ここから、選択肢を1つずつ見ていきます。
選択肢ごとの解説
A:専用の物理サーバーは追加の費用(誤り)

通常の Amazon EC2 は、図の左のように、1台の物理サーバーをほかの利用者と共有する仕組みです。
図の右のように、自社だけで使う専用の物理サーバー(Dedicated Hosts など)もあります。ただし、これはライセンスの条件などで必要なときに選ぶオプションで、追加の費用がかかります。「必ず割り当てられる」「費用が下がる」のどちらも誤りです。
B:減価償却はオンプレミスの考え方(誤り)

ハードウェアを購入して資産にし、何年かに分けて費用にしていく。これが減価償却で、オンプレミス(自社でサーバーを持つ形)の考え方です。お金の分類では資本費にあたります。
クラウドでは、ハードウェアは AWS が用意し、運用します。利用者は購入せず、使った分の料金を支払います。そのため、利用者が減価償却の期間を決める、という話にはなりません。
C:定額ではなく従量課金(誤り)

AWS の基本は従量課金で、使った量によって料金が変わります。図の右のように、使用量が増えた月は料金が増え、減った月は料金も減ります。
選択肢の「使用量に関係なく毎月同じ料金」(図の左)では、使わない月も同じ額を支払います。変動費化とは逆の説明です。
D:規模の経済で低い単価(正解)

これは規模の経済です。AWS は、膨大な数の利用者の需要をまとめて、サーバーや電力、建物を大量に調達し、運用しています。1社で調達するより単価が下がり、その効果は値下げとして利用者に還元されます。
問題文にも選択肢にも、「規模の経済」という言葉は出てきません。「大量に調達・運用」「低い単価」という中身で見分けます。
E:初期投資の代わりに使った分だけ(正解)

オンプレミスでは、図の左のように、サービスを始める前にサーバーを購入するため、まとまった初期投資が必要です。これが資本費です。
AWS では、初期投資なしで始めて、使った分だけを支払います。固定費(資本費)を変動費に置き換えられるという利点です。資金が限られたスタートアップに向いているのは、このためです。
コストの2つの利点と、問題での言い方
6つの利点のうちコストに関わる2つを、問題での言い方と合わせて整理しておきます。
| 6つの利点のうち | 問題での言い方の例 |
|---|---|
| 固定費(資本費)を変動費に | 初期投資の代わりに、使った分だけ支払う/先行投資が不要/従量課金 |
| 規模の経済の恩恵を受ける | AWS が大量に調達・運用し、低い単価の恩恵を受ける/値下げで還元 |
| 今回の誤りの選択肢 | 毎月同じ料金で予算を固定/ハードウェアの減価償却/専用の物理サーバーで費用が下がる |
3行目の誤りの選択肢は、どれもクラウドのコストの利点とは逆か、別の話です。
ポイント
- 「初期費用をかけたくない」→ 固定費を変動費に(従量課金)
- 「大量に調達・運用して低い単価」→ 規模の経済
- 減価償却はオンプレミスの考え方。専用の物理サーバーは 追加の費用 がかかるオプション
6つの利点の全体と、固定費・変動費、総保有コスト(TCO)の考え方は、講座の記事で詳しく解説しています。
講座の全14回は、連載の入口のページから順に読めます。
動画で見る
この回の内容を、YouTube の動画(約5分)でも解説しています。
連載の全回は、YouTube の再生リスト「CLF-C02 試験対策問題」にまとめています。
連載「CLF-C02 試験対策問題」
全回の目次と、読む順番・目的別の読み方は、CLF-C02 試験対策問題の入口のページにまとめています。
- 第1問 初期費用をかけずに始めるコストの利点(従量課金・規模の経済)(この記事)
- 第2問 数分でグローバルに展開(世界同時公開と低い遅延)
- 第3問 高可用性(EC2 の複数 AZ 配置と RDS マルチ AZ)
- 第4問 クラウドの俊敏性(数分で作成・すぐに削除)
- 第5問 責任共有モデル(EC2 へのリホストで AWS に任せられること)
- 第6問 数時間だけのアクセスのピークに備える(EC2 Auto Scaling・オンデマンド)
- 第7問 Well-Architected の6つの柱(信頼性・パフォーマンス効率)
- 第8問 信頼性の柱の設計原則(自動で復旧・水平方向のスケール)
- 第9問 持続可能性の柱の設計原則(使用率の最大化・マネージドサービス)
- 第10問 AWS CAF の変革ジャーニーのフェーズ(構想・連携・ローンチ・スケール)


コメント