Windows Server – DHCP サービス (DHCP の冗長方式)

DHCP サーバー

DHCP について引き続き説明を行います.
今回はWindows Server で提供できる DHCP サービスの冗長方式について説明します.

DHCP サーバー / サービスの冗長方式

冗長化の方式としては次の図のように大きく3つあります.

スコープの分割

スコープの分割による冗長化は,2台以上の DHCP サーバーでそれぞれ配布するアドレス帯を分けて設定する事で冗長化を図る方式です.
サーバーはお互いにリースする範囲が別れており,各々のステータスを意識する必要がありません.
障害が発生した場合,そのサーバーで配布するアドレス帯分,リース可能なアドレス数が減少します.

DHCP サーバーの管理はそれぞれのサーバーで行う必要があり,管理性の面ではデメリットが大きいです.
ただ,各々独立した DHCP サーバーの為,Windows Server とアプライアンス製品で構成する.など違う実装を組み合わせて提供する事が可能です.

以前の Windows Server (Windows Server 2008R2) まではこの方式しか取る事ができませんでした.
現在 (Windows Server 2012 以降) は DHCP ファイルオーバーが利用できる為,Windows Server で DHCP サービスを提供することを考えた場合に,この構成にするメリットはありません.

ホットスタンバイモード

ホットスタンバイモードは,2台の DHCP サーバーでプライマリー/セカンダリーの構成を取り,通常はアクティブ機のみが処理を行う方式です.
プライマリーとセカンダリーでリース情報の共有が行われ,プライマリー機で払い出した情報と同一の情報をセカンダリー機も持ちます.

通常時,クライアントからの DHCP DISOCVER が届いてもセカンダリー機は OFFER を返しません.プライマリー機障害時,切替が完了するまでの間は予約で指定した分のアドレス帯でのみ新規のIPアドレスのリースを行う事ができます.
また,既にプライマリー機よりリース済みのクライアントの再リース要求に対しては応答を行います.

ホットスタンバイモードは DHCP 配布ネットワーク (DHCP プール) 毎に,例えば 192.168.1.0/24 は1号機がプライマリーに.192.168.2.0/24 は2号機がプライマリーに.というようにプライマリー/セカンダリーを変える事も可能です.

各拠点にプライマリーを置き,データセンターなどの中央拠点にセカンダリーを1台配置するような構成として,セカンダリー機を共用する事も可能です.

負荷分散モード

負荷分散モードは,2台のDHCPサーバーでアクティブ/アクティブの構成を取り,両方のサーバーでリースを行う方式です.
2台のサーバー間でリース情報の共有が行われ,片方が払い出した情報と同一の情報をもう一方のサーバーも持ちます.

2台のサーバーで負荷分散するアドレスの数は割合で指定され,クライアントのMACアドレスを元にどちらの DHCP サーバーが応答するかが決定されます.
正確には,Client Identifier または MAC アドレスになりますが,Client Identifier が優先されます.

この形式において,受け持つべきではないと判断したサーバーは クライアントからの DHCP DISCOVER が届いても OFFER を返しません.
片系機障害時,切替が完了するまでの間はもう片系がリース可能な範囲 (負荷分散の割合を元に判断されたクライアントからのリクエスト) のみ新規リースを行う事ができます.
また,既に障害発生機よりリース済みのクライアントの再リース要求に対してはアクティブ機から応答を行います.

負荷分散方式のまとめ

ホットスタンバイモードと負荷分散モードを比較すると次の表のとおりとなります.

ホットスタンバイモード負荷分散モード
正常時
(新規リース)
アクティブ機のみ応答
初回のリース時間は MCLT の設定値
2台とも応答
初回のリース時間は MCLT の設定値
正常時
(リース更新)
アクティブ機のみ応答
更新のリース時間はプールの設定値
2台とも応答
更新のリース時間はプールの設定値
アドレスプールの
処理
スタンバイ機の予約を除いて
全てをアクティブ機で持つ
2台で分散して持つ
障害発生直後
(新規リース)
スタンバイ機の予備分で応答稼動機が管理すべきクライアントのみ応答
障害発生直後
(リース更新)
スタンバイ機が応答稼動機が応答
切り替わり完了後
(新規リース)
100% の範囲をスタンバイ機が応答100% の範囲をスタンバイ機が応答

DHCP フェイルオーバープロパティの紹介

上述で MCLT という単語が出ましたので,以下に Windows Server における DHCP フェイルオーバー構成のプロパティと説明を纏めます.

状態の切り替えの間隔パートナーとの通信が途絶え「パートナー停止中 (Partner-down)」に切り替わるまでの時間です.デフォルト値は60分です.
ホットスタンバイモードでスタンバイ側のレンジが少ない.や,,負荷分散モードを使用する場合は時間を短くすることを検討したほうが良いです.
クライアントの最大リードタイム(MCLT)「パートナー停止中」になった後,稼動機側がスコープ全体を管理可能となるための待ち時間および,障害発生時の新規リース時間です.デフォルト値は60分です.
短くすると,パートナー停止中から稼動機が全体管理可能までの時間が短くなります.また,新規の端末に対するリース時間も短くなります.
長くすると,稼動機が全体管理可能までの時間が長くなります.また,新規の端末に対するリースが不可能になる割合が上がります.
負荷分散モード:ローカル/パートナーの割合負荷分散モードにおいて,2台の処理の割合(比率)を決定する設定です.
各々が管理するアドレスも割合で分割管理されます.
対象クライアントの Client Identifier か CHADDR (MAC アドレス) ハッシュの結果で2台のうちどのサーバーが応答するかが決定されます.
ホットスタンバイモード:予約アドレススタンバイサーバー用に予約するアドレスの割合を決定する設定です.
プールレンジが 100 アドレス,予約 10% の場合は 90個が通常利用可能なアドレスとなり,10個が障害時に利用されるアドレスとなります.

今回はここまでとし,次回はホットスタンバイモードの際の動作詳細について解説します.

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