証明書の有効期間が短くなる、という話は聞いたことがあると思います。では、いつ、何日になるのか。自分が使っている Let’s Encrypt や ACM、有料の証明書は、いつから影響を受けるのか。答えられるでしょうか。
短縮は一度では終わりません。2026年から2029年にかけて、CA/Browser Forum の決まりと、各 CA の既定の変更が少しずつ、別々の日付で効いていきます。この記事は、その日付を1つの年表にまとめた早見表です。内容は、日程が近づいたら更新していきます(最終の確認日は「更新履歴」を参照)。
結論:短縮の年表
公開証明書(ブラウザーが最初から信頼する公開CAの証明書)について、決まっている日付を並べました。左の列が CA/Browser Forum の Baseline Requirements(BR)で、すべての公開CAに効く決まりです。右の列は、各 CA・サービスの既定の変更です。
| 日付 | すべての公開CA(BR) | Let’s Encrypt・ACM |
|---|---|---|
| 2026年2月18日 | ― | ACM の公開証明書が198日に(期限の45日前に自動更新) |
| 2026年3月15日 | 最長有効期間 398日 → 200日。ドメイン認証の再利用 200日、組織情報の再利用 398日。メール・電話によるドメイン認証は非推奨に。MPIC は3拠点 | ― |
| 2026年6月15日 | MPIC が4拠点に | ― |
| 2026年12月15日 | MPIC が5拠点に | ― |
| 2027年2月10日 | ― | Let’s Encrypt の既定が90日 → 64日、認証の再利用 30日 → 10日 |
| 2027年3月15日 | 最長有効期間 100日、ドメイン認証の再利用 100日。電話によるドメイン認証を廃止。CAA の accounturi・validationmethods を CA が必ず処理 | ― |
| 2027年3月31日 | ― | ACM がメール検証を新しい証明書の申請で提供しなくなる |
| 2027年9月30日 | ― | ACM がメール検証の証明書を更新しなくなる |
| 2028年2月16日 | ― | Let’s Encrypt の既定が 45日、認証の再利用 7時間 |
| 2028年3月15日 | メールによるドメイン認証を廃止 | ― |
| 2029年3月15日 | 最長有効期間 47日、ドメイン認証の再利用 10日 | ― |
200日・100日・47日の段階は、Ballot SC-081v3(2025年4月11日に可決)で決まり、BR の6.3.2節(有効期間)と4.2.1節(再利用期間)に書かれています。仕組みと決まった経緯は第6回(有効期間と再利用期間の短縮)で解説しました。
いま(2026年11月)の状態
- 公開証明書の上限は200日。2026年3月15日以降に発行・更新した証明書は、200日を超えられない
- Let’s Encrypt の既定(classic プロファイル)は、まだ90日・認証の再利用30日。45日(tlsserver)と約6日(shortlived)のプロファイルは、選べば今でも使える
- ACM の公開証明書は198日で、期限の45日前に自動で更新される
- MPIC は4拠点。12月15日から5拠点になる
- AD CS・AWS Private CA・vCenter の VMCA など社内CAの証明書は、BR の対象外。有効期間は社内の規程で決める
200日になったことで、1年に1回だった有料の証明書の更新は、すでに年に2回になっています。
2つの「日数」:有効期間と再利用期間
短縮には、2つの日数があります。
- 有効期間:証明書そのものが使える期間。期限が来たら、新しい証明書に入れ替える
- 再利用期間:CA が「申請者がそのドメインを管理している」と確かめた結果(ドメイン認証)を、次の発行に使い回せる期間
2029年3月には、有効期間が47日なのに対して、ドメイン認証の再利用は10日になります。つまり、更新のたびに、ほぼ毎回ドメイン認証をやり直すことになります。DNS に TXT レコードを置く、Web サーバーにファイルを置く、といった確認を毎回手作業で行うのは現実的ではありません。ACME による自動化が前提になる、というのはこの意味です。
組織情報(OV・EV の会社名など)の再利用期間は398日のままです。毎回変わるのは、ドメインの確認のほうです。
何枚あると、年に何回の作業になるか
第8回(ライフサイクルと自動化)の表を再掲します。
| 最長有効期間 | 適用開始 | 1枚の年間の更新回数(目安) | 100枚なら年間の作業 |
|---|---|---|---|
| 398日 | 2020年9月 | 約1回 | 約100回 |
| 200日 | 2026年3月15日 | 約2〜3回 | 約200〜300回 |
| 100日 | 2027年3月15日 | 約4〜6回 | 約400〜600回 |
| 47日 | 2029年3月15日 | 約8〜12回 | 約800〜1,200回 |
(回数の幅は、期限ぎりぎりで更新する場合と、余裕を持って残り1/3で更新する場合)
次の切り替え(2027年3月15日の100日)で、手作業の回数はもう一度倍になります。手作業の枚数を減らすなら、この前が区切りです。
立場ごとの影響
有料の公開CAの証明書を、手作業で更新している
いちばん影響が大きい立場です。今は年に2回、2027年3月15日からは年に4回前後、2029年3月15日からは毎月近くになります。
- 2026年3月から、メール・電話によるドメイン認証は非推奨。電話は2027年3月15日、メールは2028年3月15日に使えなくなる。DNS か Web サーバーで確かめる方法へ移す
- 複数年の契約でも、証明書は上限の日数ごとに発行し直す。契約の期間と証明書の期間は別
Let’s Encrypt を使っている
自動で更新していて、ACME クライアントが ARI(ACME Renewal Information、RFC 9773) に対応していれば、ほとんど何もしなくて済みます。Let’s Encrypt も、ARI に対応したクライアントなら準備はできている、としています。
注意が要るのは、更新の時期を固定の日数で書いている場合です。2027年2月10日以降は、新しく発行・更新した証明書が64日になります(45日・約6日のプロファイルを選んだものを除く)。
- 「期限の何日前に更新」「60日ごとに更新」のように日数を固定していると、64日の証明書では余裕がほとんど無いか、更新が間に合わない
- Let’s Encrypt は、固定の日数をやめて有効期間の約2/3で更新するよう勧め、cron やスクリプト・手順書の中の 83・80・60 といった数字を探すよう呼びかけている
- 90日の証明書の最後のものは、2027年5月11日に期限を迎える見込み
- 認証の再利用が10日になる。再利用を前提に作った仕組みでなければ、変更は要らない
ACM(AWS Certificate Manager)を使っている
ACM が発行した公開証明書は、すでに198日で、期限の45日前に自動で更新されます。
- DNS 検証の CNAME レコードを消さない。消すと自動更新ができない
- メール検証で発行した証明書は、DNS 検証に移す。2027年3月31日から新しい申請でメール検証が使えなくなり、2027年9月30日からはメール検証の証明書が更新されなくなる
- ACM にインポートした証明書は自動更新の対象外。期限は自分で管理する
社内CAの証明書を使っている
AD CS などの社内CAが発行した証明書は、BR の上限の対象外です。今の運用をすぐに変える必要はありません。
- ただし、公開CAの証明書を社内のシステムに使っているなら、上の「有料の公開CA」と同じ影響を受ける。外に公開しない管理画面などは、社内CAの証明書に切り替えると、短縮の影響を受けなくなる(第11回の問3)
- 有効期間を何日にするかは、社内の規程で決める。長すぎると、鍵が漏れたときの影響が長く続く
次の切り替えまでにやること
2027年2月10日(Let’s Encrypt の64日)と2027年3月15日(100日)の前に、次の順で確かめておくと安心です。
- 棚卸し:自社のドメインの証明書を、CT のログ(crt.sh など)・スキャン・台帳で洗い出す。知らない証明書は自動化できない(第8回)
- 更新の方法を決める:ACME で自動化できるものは自動化する。自動化できない機器は、ロードバランサーで終端する・社内CAに切り替える・ACME 対応の製品に替えるのどれかを選ぶ(第8回・第9回)
- 更新の時期を固定していないか確かめる:cron・スクリプト・手順書の固定の日数を探し、ARI か有効期間の2/3に替える
- ドメイン認証の方法を確かめる:メール・電話で確かめている証明書は、DNS か Web サーバーの方法へ移す(第6回)。ACM はメール検証から DNS 検証へ
- CAA を確かめる:使っている CA が CAA に書かれているか。
accounturiを書いているなら、アカウントが正しいか(第5回) - 期限を監視する:「残り何日」だけでなく、「更新されるはずの時期を過ぎても古いまま」を警告する(第8回)
更新履歴
- 2026年11月2日:公開(BR 2.3.1、Let’s Encrypt の2026年10月7日の告知、ACM の2026年2月18日の変更までを反映)
参考資料
- CA/Browser Forum:Ballot SC-081v3(有効期間と再利用期間の短縮の日程)https://cabforum.org/2025/04/11/ballot-sc081v3-introduce-schedule-of-reducing-validity-and-data-reuse-periods/
- CA/Browser Forum:Baseline Requirements(6.3.2 有効期間、4.2.1 再利用期間、3.2.2.4 ドメイン認証の方法、3.2.2.9 MPIC)https://cabforum.org/working-groups/server/baseline-requirements/requirements/
- Let’s Encrypt:64日の証明書への移行(2026年10月7日)https://letsencrypt.org/2026/10/07/64-day-certs
- Let’s Encrypt:90日から45日へ(2025年12月2日)https://letsencrypt.org/2025/12/02/from-90-to-45
- Let’s Encrypt:プロファイル https://letsencrypt.org/docs/profiles/
- AWS:ACM の公開証明書の有効期間の変更(2026年2月18日)https://aws.amazon.com/about-aws/whats-new/2026/02/aws-certificate-manager-updates-default
- AWS Security Blog:ACM のメール検証の終了 https://aws.amazon.com/blogs/security/aws-certificate-manager-will-discontinue-email-validation-to-prove-domain-validation-for-certificates/
- RFC 9773(ARI)
証明書の仕組みを順に学びたい方は、連載「証明書入門」(全11回)の入口のページからどうぞ。


コメント