「台数を増やしたり、大きなインスタンスにしたりすれば、止まりにくくなるはずです。それでは足りないのですか」
「バックアップを毎日取っていれば、障害が起きても安心だと思っていました」
AWS Certified Cloud Practitioner(試験コード CLF-C02。以下 CLF)では、障害が起きる範囲(ここでは AZ 全体)に耐えられる設計かどうかを問う問題がよく出ます。今回は、EC2 と RDS で作った受注システムを、AZ 全体に障害が起きても止めないための設計を選びます。
この記事は、CLF の練習問題を1問ずつ解説する連載の第3問です。問題は筆者が試験の範囲に合わせて作ったもので、実際の試験の問題ではありません。まず自分で答えを選んでから、解説を読んでください。
▶ この回の内容は、YouTube の動画(約4分)でも見られます(記事の最後にも埋め込んであります)。
問題
ある企業は、社内の受注システムを Amazon EC2 と Amazon RDS で構築しています。データセンター単位の停電などでアベイラビリティーゾーン(AZ)全体に障害が起きても、受注を止めたくないと考えています。最も適切な設計はどれですか。
- A. 1つの AZ の中で EC2 の台数を増やし、Auto Scaling で台数を保つ
- B. EC2 の AMI と RDS のスナップショットを、毎日取得しておく
- C. 1つの AZ に、より大きなインスタンスタイプの EC2 を配置する
- D. EC2 を複数の AZ に配置して Elastic Load Balancing で振り分け、RDS をマルチ AZ 配置にする
答えを決めたら、下を開いてください。
正解を見る(クリックで開きます)
正解:D
EC2 を複数の AZ に配置して Elastic Load Balancing で振り分け、RDS をマルチ AZ 配置にすると、AZ 全体が止まっても、アプリケーションとデータベースの両方が別の AZ で動き続けます。
正解は D
正解は D です。
- EC2:複数の AZ に配置し、Elastic Load Balancing で振り分ける
- RDS:マルチ AZ 配置にする
AZ 全体が止まっても、アプリケーションとデータベースの両方が、別の AZ で動き続けます。ここから、選択肢を1つずつ見ていきます。
選択肢ごとの解説
A:台数を増やしても AZ は1つ(誤り)

台数を増やせば、図の左のように、1台の故障には耐えられます。Auto Scaling が、代わりのインスタンスを起動して、台数を保ちます。
しかし、すべてのインスタンスが同じ AZ にあります。図の右のように、AZ 全体に障害が起きると、すべて同時に止まってしまいます。同じ AZ に何台並べても、AZ 全体の障害には耐えられません。
B:バックアップは復旧の手段(誤り)

EC2 の AMI や、RDS のスナップショットは、障害の後に復旧するためのバックアップです。図の下のように、AZ の障害が起きるとシステムは止まり、バックアップから復元して再開するまでの間、受注は止まったままです。
止めないための仕組みではありません。
C:大きくしても1台・1つの AZ(誤り)

より大きなインスタンスタイプにするのは、図の左の、垂直スケーリングです。1台の性能は上がります。
しかし、1つの AZ に1台のままです。図の右のように、AZ の障害が起きると、その1台ごと止まってしまいます。垂直スケーリングは、1台の性能を上げるだけです。
D:EC2 も RDS も複数の AZ に(正解)

図は、EC2 を2つの AZ に置いた構成です。Elastic Load Balancing(ELB)が、利用者からの通信を、動いている AZ に振り分けます。
RDS のマルチ AZ 配置では、別の AZ に、同期したスタンバイを置きます。障害が起きると、スタンバイに自動で切り替わります。AZ-a が止まっても、AZ-b の EC2 と RDS で、受注を続けられます。
止めない/失わない・戻せる
2つの対策の違いを整理しておきます。目的が 止めないこと ならマルチ AZ、失わない・戻せること ならバックアップです。どちらも大切ですが役割が違うので、試験では、問題の目的がどちらかで見分けます。
| 観点 | 止めない(高可用性) | 失わない・戻せる(バックアップ) |
|---|---|---|
| 仕組み | 複数の AZ に分けて配置(マルチ AZ) | AMI・スナップショットを取得 |
| AWS の例 | EC2 を複数 AZ + ELB、RDS マルチ AZ | EC2 の AMI、RDS のスナップショット |
| 障害のとき | 別の AZ で稼働を続ける | 復元するまで止まる |
ポイント
- AZ 全体の障害でも止めない = 複数の AZ(EC2 + ELB、RDS マルチ AZ)
- 同じ AZ で台数を増やす・大きくするだけでは、AZ の障害 で止まる
- 「止めない」→ マルチ AZ、「失わない・戻せる」→ バックアップ
複数の AZ に分けて置く考え方と、RDS のマルチ AZ 配置は、講座の記事で詳しく解説しています。
講座の全14回は、連載の入口のページから順に読めます。
動画で見る
この回の内容を、YouTube の動画(約4分)でも解説しています。
連載の全回は、YouTube の再生リスト「CLF-C02 試験対策問題」にまとめています。
連載「CLF-C02 試験対策問題」
全回の目次と、読む順番・目的別の読み方は、CLF-C02 試験対策問題の入口のページにまとめています。
- 第1問 初期費用をかけずに始めるコストの利点(従量課金・規模の経済)
- 第2問 数分でグローバルに展開(世界同時公開と低い遅延)
- 第3問 高可用性(EC2 の複数 AZ 配置と RDS マルチ AZ)(この記事)
- 第4問 クラウドの俊敏性(数分で作成・すぐに削除)
- 第5問 責任共有モデル(EC2 へのリホストで AWS に任せられること)
- 第6問 数時間だけのアクセスのピークに備える(EC2 Auto Scaling・オンデマンド)
- 第7問 Well-Architected の6つの柱(信頼性・パフォーマンス効率)
- 第8問 信頼性の柱の設計原則(自動で復旧・水平方向のスケール)
- 第9問 持続可能性の柱の設計原則(使用率の最大化・マネージドサービス)
- 第10問 AWS CAF の変革ジャーニーのフェーズ(構想・連携・ローンチ・スケール)
- 第11問 AWS CAF のパースペクティブ(構成管理・パッチ管理はオペレーション)
- 第12問 移行のビジネスケース(Migration Evaluator)
- 第13問 AWS CAF のパースペクティブ(役割と組織の変化は人材)
- 第14問 サーバーをそのまま EC2 に移す(AWS Transform MGN)
- 第15問 ファイルの移行(AWS DataSync)
- 第16問 移行戦略の7つの R(リパーチェス・SaaS への乗り換え)
- 第17問 適切なサイズ設定(CPU は余り、メモリが不足)
- 第18問 責任共有モデル(Lambda と RDS)
- 第19問 最小権限の原則(IAM のポリシーと SCP)
- 第20問 責任共有モデル(EC2 と S3、AWS の責任)
- 第21問 共有統制の例(責任共有モデルの IT 統制)
- 第22問 コンプライアンスの資料と契約(AWS Artifact)
- 第23問 脅威の検出(Amazon GuardDuty)
- 第24問 脆弱性の継続的なスキャン(Amazon Inspector)
- 第25問 S3 の機密データの検出(Amazon Macie)
- 第26問 S3 の保管時の暗号化とキーの管理
- 第27問 だれが操作したかを調べる(AWS CloudTrail)
- 第28問 IAM ユーザーの認証情報の一覧(認証情報レポート)
- 第29問 EC2 のアプリケーションに権限を与える(IAM ロール)
- 第30問 データベースのパスワードの自動ローテーション(AWS Secrets Manager)


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