「ADにログオンできない端末が1台だけあります。パスワードは合っているんですが……」
「社内のNTPサーバーは、何台をどこに置けばいいのでしょうか?」
時刻同期は、Kerberos認証、証明書の有効期間、ワンタイムパスワード、ログの突き合わせ、監査の証跡など、時刻を前提にしているほとんどすべての仕組みの土台です。合っていて当たり前と思われがちですが、ずれると時刻とは無関係に見える形の障害として表に出てくるため、原因が分かりにくくなります。
連載「NTP入門」は、なぜ時刻を合わせるのかから始め、NTPの仕組み、Linux(chrony)・Windows・ネットワーク機器・仮想基盤での設定、社内の時刻同期の設計、セキュリティ、PTPによる高精度の同期を経て、最後はトラブルの切り分けと設計を自分でできるところまでを目指す全11回の連載です。このページは、その入口として、各回の内容と読む順番をまとめています。

この連載で分かること
- 時刻同期が必要な理由:時刻のずれが起こす障害(認証・証明書・ワンタイムパスワード・ログ)、規制・基準が求める時刻、時計がずれる理由
- 時刻とNTPの仕組み:UTC・TAI・うるう秒、UNIX時刻とNTP時刻、stratumの階層、offsetとdelayの計算、slewとstep
- 機器ごとの設定と読み方:Linux(chrony)、Windows(W32Timeとドメインの時刻の階層)、Cisco IOS、ESXi・vCenter
- 設計:社内の3層の構成、時刻源の数、公開NTPサーバーの選び方、クラウドの時刻、リープスメア、監視
- 守り方と高精度の同期:時刻をずらす攻撃とNTS、PTP(IEEE 1588)の仕組みとNTPとの使い分け
- 障害対応と設計演習:「時刻が合わない」ときの切り分けの手順、4つの設計演習
仕様や数値は、2026年9月時点の情報に合わせています(うるう秒の廃止の決定は2026年10月)。
こんな人に向いています
- サーバーやネットワークの仕事を始めたばかりで、時刻同期を基礎から学びたい人
- 「ADにログオンできない」「証明書が有効でない」といった障害で、時計のずれを疑えるようになりたい人
- 社内のNTPサーバーや、仮想基盤・ネットワーク機器の時刻同期を設計・見直ししたい人
- 監査やログ管理のために、時刻の精度を数値で示す必要がある人
学ぶ順番
全11回を、3つのまとまりに分けています。初めての人は第1回から順に読むのがおすすめです。第1〜3回で「なぜ・何に・どうやって」合わせるのかを押さえると、第4回以降の設定の意味が分かりやすくなります。1回の記事は12分前後で読めます(全部で約2時間15分)。
仕組みを知る(第1〜3回)
- 第1回 なぜ時刻同期が必要か
Kerberosの5分、証明書の有効期間、ワンタイムパスワード、ログの順序、規制が求める時刻、水晶の時計がずれる理由(ppm)、用途ごとの必要な精度。 - 第2回 時刻の基礎知識
UTC・TAI・UT1・JSTの関係、うるう秒と2027年5月20日からの廃止、UNIX時刻とNTP時刻のエポック、2036年・2038年問題、RTC、時刻の源。 - 第3回 NTPの仕組み
stratumの階層、4つのタイムスタンプとoffset・delay、時刻源の選び方と台数、slewとstep、ポーリング間隔、動作モード、poolとiburst。
機器ごとの設定と設計(第4〜7回)
- 第4回 Linuxの時刻同期(chrony)
ntpdからchronyへ、chrony.confの設定と設定例、chronyc trackingとsourcesの読み方、Reachの8進数、systemd-timesyncd、仮想マシンとコンテナの時刻。 - 第5回 Windowsの時刻同期
W32Timeの役割、ADドメインの時刻の階層とPDCエミュレーターの設定、w32tmの読み方、高精度の時刻同期、グループポリシー、仮想マシンのDC。 - 第6回 ネットワーク機器・仮想基盤
Cisco IOSの設定と確認、機器をNTPサーバーにするか、ESXi・vCenterの時刻同期、ホストとVMの時刻、アプライアンス、時刻源の台帳。 - 第7回 設計と推奨構成(2026年11月1日公開予定)
社内の3層の階層設計、参照先と台数、公開NTPサーバーの選び方、GNSSアプライアンス、AWS・Azure・Google Cloudの時刻、リープスメア、監視。
守る・高精度・直す(第8〜11回)
- 第8回 NTPのセキュリティ(2026年11月1日公開予定)
時刻をずらす攻撃、monlistの増幅攻撃、chrony・ntpdの公開の制限、UDP 123の制限、対称鍵の認証、NTSの仕組みとchronyでの設定例。 - 第9回 PTPと高精度同期(2026年11月2日公開予定)
PTP(IEEE 1588)とNTPの違い、グランドマスターとBMCA、境界クロックと透過クロック、ハードウェアタイムスタンプ、linuxptp、NTPとの使い分け。 - 第10回 時刻同期のトラブルシュート(2026年11月2日公開予定)
切り分けの手順、UDP 123、使われない時刻源、大きなずれの直し方、仮想マシンの時刻の飛び、Kerberos・証明書のずれ、原因と確認コマンドの対応表。 - 第11回 時刻同期の設計演習(2026年11月3日公開予定)
3拠点の階層設計、オンプレとAWSのログの時刻をそろえる方法、ときどき失敗するKerberos認証、UTCから1ms以内を示す方法の4問。
目的別の読み方
全部を読む時間が無いときは、困っていることに近い回から読んでください。
| 困っていること・知りたいこと | まず読む回 |
|---|---|
| ADにログオンできない・証明書が「まだ有効でない」と言われる | 第1回 → 第10回 |
Linuxの時刻がずれている・chronycの出力が読めない | 第4回 → 第10回 |
| ドメインのWindowsの時刻を設計・確認したい | 第5回 → 第7回 |
| ネットワーク機器・ESXi・仮想マシンの時刻を合わせたい | 第6回 → 第4回 |
| 社内の時刻同期を設計する・クラウドの時刻を知りたい | 第7回 → 第11回 |
| うるう秒の廃止や2038年問題を知りたい | 第2回 |
| NTPを狙う攻撃と対策、NTSを知りたい | 第8回 |
| NTPより高い精度(PTP)が必要 | 第9回 → 第3回 |
あわせて読みたい連載
時刻は、ほかの仕組みの前提にもなっています。時刻の知識がそのまま役に立つ連載です。
- 連載「証明書入門」:端末の時計がずれると証明書が「まだ有効でない」と見える理由に関わる証明書の有効期間や、時刻のずれも原因に挙がる証明書エラーの切り分けを扱っています
- 連載「DNS入門」:署名に有効期間があり、期限が切れると検証に失敗するDNSSECが出てきます
- 連載「クラウド入門」:AWSのAmazon Time Sync Serviceを、VPCのネットワークの中で位置づけています
よくある質問
前提の知識はどのくらい必要ですか?
サーバーやネットワーク機器を触った経験が少しあれば十分です。時刻の基礎の用語(UTC・うるう秒など)は第2回、NTPの仕組みは第3回で、それぞれ最初から説明しています。
どの回から読めばいいですか?
初めての人は第1回から順に読んでください。Linuxの設定だけが必要な人は第4回、ADドメインのWindowsなら第5回から読み始めても構いませんが、stratumやoffsetなどの言葉は第3回で説明しているので、読み飛ばしたときはここに戻ってください。特定の困りごとがある人は、上の「目的別の読み方」から読み始めても構いません。
内容はいつの時点の情報ですか?
仕様や数値は2026年9月時点の情報に合わせています。うるう秒の廃止(2027年5月20日から連続したUTC)の決定は2026年10月です。NTPの基本の仕組みはほとんど変わりませんが、ソフトウェアの版や公開NTPサーバーの運用、各社の対応状況は変わることがあるため、記事の中で時点を添えています。