【クラウド入門 第2回】AWSの全体像 ― リージョン・AZ・AZ ID、エッジロケーション・Local Zones、アカウントとルートユーザー、CLI・IaC、ARN、料金の構成と無料利用枠、Azureとの対応

クラウド
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「取引先の AWS アカウントのサーバーと同じ ap-northeast-1a に置きました。同じデータセンターなので、遅延は小さいですよね」
「検証のために AWS のアカウントを作って少し触っただけなのに、翌月に請求が来ました」

第1回では、クラウドの定義と責任共有モデルを見ました。AWS を実際に使い始めると、最初に出会うのが リージョン・AZ・アカウント・料金 です。どれも画面の上では1行の選択肢ですが、どこに置くかで可用性が、どのアカウントで作るかで権限と請求の境界が、何を動かしたままにするかで料金が決まります。ここを知らないと、冒頭のような勘違いや「無料のはず」の請求が起きます。

第2回では、AWS のグローバルなインフラ(リージョン・AZ・エッジロケーション・Local Zones・Wavelength)、AZ 名と AZ ID、AWS アカウントとルートユーザー、操作の手段、ARN とサービスエンドポイント、料金の構成要素、無料利用枠、Azure との対応を扱います。数値と料金は2026年9月時点で、料金は東京リージョンの例です。


グローバルインフラストラクチャの規模

AWS の基盤は、大きい順に リージョン ⊃ AZ ⊃ データセンター(DC) の階層になっています。エッジロケーションや Local Zones は、リージョンの外側に置かれた延長です。

AWS のグローバルインフラストラクチャの用語の階層を示す図。上は「リージョン」の枠の中に「AZ」の点線の枠が3つあり、それぞれの AZ に「DC」が2つずつある。その下の「リージョンの外側に置かれた延長」の点線の枠に、リージョンから点線でつながる「エッジロケーション(CloudFront・Route 53)」「Local Zones(特定の都市に置いた AZ の小型版)」「Outposts(利用者の DC に置く AWS のラック)」が並ぶ。まとめは「リージョン ⊃ AZ ⊃ DC。エッジ/Local Zones はリージョンの外側に置かれた延長」。下の「用語の階層」の表は、リージョン:地理的に独立したエリア(東京・大阪 …)、AZ(アベイラビリティーゾーン):独立した DC 群。3 つ以上/リージョン、エッジロケーション:CloudFront・Route 53 が動く数百の拠点、Local Zones:特定の都市に置かれた AZ の小型版(低遅延向け)、Outposts:AWS のラックを利用者の DC に置き、同じ API で使う。
  • リージョン:39の地理的なエリア(2026年9月時点。サウジアラビア・チリの2つも発表済み。最新の数は公式の「グローバルインフラストラクチャ」のページ aws.amazon.com/about-aws/global-infrastructure/ で確かめる)。日本は 東京(ap-northeast-1、2011年)と大阪(ap-northeast-3、2021年)
  • アベイラビリティーゾーン(AZ):全体で120を超える。1つの AZ は1つ以上の DC でできていて、AZ どうしは数 km〜100 km 程度離れ、独立した電源・空調・ネットワーク を持つ。AZ 間は専用の低遅延の回線で結ばれ、遅延は1桁ミリ秒(同期レプリケーションができる程度)。1つのリージョンに3つ以上
  • エッジロケーション:CloudFront・Route 53 などが使う数百の拠点(後の「エッジロケーション・Local Zones・Wavelength」の節)
  • Local Zones:特定の都市に置かれた AZ の小型版。低遅延が必要な用途向け
  • Outposts:AWS のラックを利用者の DC に置き、同じ API で使う(プライベートクラウド的な使い方。第1回の「配置モデル」)
  • 東京リージョンで使える AZ は3つ(AZ ID:apne1-az1・az2・az4。次の次の節「AZ 名と AZ ID」)

リージョンと AZ

リージョンは地理的に独立したエリアで、リージョン間はデータもコントロールプレーンも原則として分離 されています。東京リージョンに作った EC2 は大阪リージョンの画面には出てきませんし、リージョン間の通信は、インターネット経由か AWS のバックボーン経由で明示的に設計する必要があります。

AZ はリージョンの中の独立した DC 群で、1つの AZ 全体が停止しても、ほかの AZ は動き続けるように設計されています。AWS の上での可用性の設計の基本は 「複数の AZ にまたがって配置する」 ことで、ELB・Auto Scaling(第4回)、RDS のマルチ AZ(第10回)は、いずれもこの前提で動きます。逆に、単一の AZ だけに置いたシステムは、AZ の障害(東京でも2019年8月に冷却の障害で発生)でそのまま止まります。

リージョンは、利用者との距離(遅延)、データの所在の規制、必要なサービスの提供の有無(新しいサービスは米国から順に展開)、料金(東京は米国東部より1〜2割高い) の4点で選びます。

点線の枠「リージョン ap-northeast-1(東京)」の中に紫の枠「VPC(AZ をまたぐ)」があり、その中に「AZ apne1-az1」「AZ apne1-az2」「AZ apne1-az4」の3つの縦長の点線の枠が並び、上の「ELB」から3つの AZ の「EC2」へ矢印が伸び、az1 の「RDS プライマリ」と az2 の「RDS スタンバイ」が「同期」の両向きの矢印で結ばれ、枠の下に「AZ 間:独立した電源・空調・NW、数 km〜100 km、遅延 1 ms 未満。1 AZ が止まっても他 AZ で継続」、東京の枠から「クロスリージョン複製は明示設定」の点線の矢印が下の枠「リージョン ap-northeast-3(大阪)」へ伸び、その枠に「別リージョンとはデータもコントロールプレーンも分離。複製・接続は明示的に設計する」と書かれた図
  • リージョン=独立したエリア。リージョン間は 明示的に設計しないとつながらない
  • AZ=リージョンの中の独立した DC 群。マルチ AZ が可用性の設計の基本の単位
  • 選ぶ基準:遅延・規制・サービスの提供の有無・料金

AZ の中・複数の AZ・リージョンをまたぐという冗長の範囲の考え方は、このブログの連載「ストレージ入門」第11回の「冗長の範囲:AZの中・複数のAZ・リージョン」でも扱います。


AZ 名と AZ ID

コンソールに出る ap-northeast-1a のような名前と、実際の物理的な AZ の関係には注意が要ります。

  • 東京のように2012年11月より前に開設されたリージョンでは、コンソールに出る ap-northeast-1a のような AZ 名と物理的な AZ の対応が、アカウントごとに異なる(2025年10月までに作ったアカウントの場合。負荷を分散するため)。A 社の 1a と B 社の 1a は、別の DC の可能性がある。大阪など新しいリージョンと、2025年11月以降に作ったアカウントでは対応は共通
  • 物理的な AZ を一意に指す識別子が AZ ID(apne1-az1 など)。複数のアカウントの間で「同じ AZ に置いて遅延を下げたい」「AZ の障害の影響範囲を突き合わせたい」ときは、AZ ID で比べる
  • 確かめ方:aws ec2 describe-availability-zones --region ap-northeast-1 の ZoneId の列
  • 東京の apne1-az3 は新しいアカウントには開放されておらず、使えるのは az1・az2・az4 の3つ
  • ネットワークの「同じセグメント」の感覚に近いのは AZ の中。AZ をまたぐ通信には、データ転送料(1 GB あたり 0.01 USD を双方向で。第12回)と遅延(AWS の説明では1桁ミリ秒)が乗る

冒頭の1つ目の相談がこれです。自分の ap-northeast-1a と取引先の ap-northeast-1a が同じとは限りません。AZ ID を突き合わせて 確かめます。「同じセグメントなら直接届き、違えばゲートウェイを経由する」という判定は、このブログの連載「TCP/IP入門」第7回の「デフォルトゲートウェイと宛先の判定」で扱います。

左の枠「アカウント A」に「ap-northeast-1a → apne1-az4」「ap-northeast-1c → apne1-az1」「ap-northeast-1d → apne1-az2」、右の枠「アカウント B」に「ap-northeast-1a → apne1-az1」「ap-northeast-1c → apne1-az2」「ap-northeast-1d → apne1-az4」が並び、その下に「AZ 名(1a/1c/1d)の対応はアカウントごとに違う(古いアカウントの例)。物理 AZ を指すのは AZ ID」、中段の点線の枠「物理 AZ(東京リージョン)」に「apne1-az1」「apne1-az2」「apne1-az4」の3つの枠と「az3 は新規アカウントに非開放」の注記、下段に「$ aws ec2 describe-availability-zones --region ap-northeast-1 → ZoneId 列で確認」と「AZ をまたぐ通信=データ転送料(0.01 USD/GB × 双方向)+遅延(1 桁 ms)。「同一セグメント」の感覚に近いのは AZ 内」と書かれた図

AZ 名と AZ ID の対応は、次のように表にして見ると分かりやすくなります(出力はアカウント A の場合の例)。

$ aws ec2 describe-availability-zones --region ap-northeast-1 \
    --query "AvailabilityZones[].[ZoneName,ZoneId]" --output table
-------------------------------------
|     DescribeAvailabilityZones     |
+------------------+----------------+
|  ap-northeast-1a |  apne1-az4     |
|  ap-northeast-1c |  apne1-az1     |
|  ap-northeast-1d |  apne1-az2     |
+------------------+----------------+

エッジロケーション・Local Zones・Wavelength

リージョンの外にも、利用者の近くで動く拠点があります。

上の点線の枠「リージョン(東京)」に「EC2」「RDS」の箱と「本体:全サービスが揃う」があり、そこから3本の矢印が、「配信・名前解決を近くで」の札の付いた「エッジロケーション CloudFront・Route 53・WAF」、「VPC を延長」の札の付いた「Local Zones EC2・EBS・VPC の一部」、「Wavelength 5G 網内(KDDI)」へ伸び、3つからそれぞれ下の「利用者(都市部・モバイル)」へ矢印が伸び、一番下に太字で「エッジ=「配信を近くで」、Local Zones=「計算資源を近くに」」と書かれた図
  • エッジロケーション:CloudFront(CDN)・Route 53(DNS)・AWS WAF・Global Accelerator が動く拠点。リージョンより多く、利用者の近くに置かれている。東京・大阪にも複数ある
  • リージョナルエッジキャッシュ:エッジロケーションとオリジンの間にある中間のキャッシュの層
  • Local Zones:都市部に置く EC2・EBS・VPC のサブセット。親リージョンの VPC を延長して使う。東京リージョン(ap-northeast-1)を親とする Local Zone は、台北(ap-northeast-1-tpe-1)に提供されている(2026年9月時点)
  • Wavelength:通信事業者の 5G 網の中に置く拠点(日本では KDDI)。モバイル端末からの超低遅延の用途に使う
  • 用途の違い:エッジは 「配信・名前解決を近くで」 行い、Local Zones は 「計算資源を近くに」 置く

Route 53 と CloudFront は第7回で扱います。Route 53 の DNS の機能は、このブログの連載「DNS入門」第10回「クラウド・社内環境のDNS」でも詳しく扱っています。


AWS アカウントとルートユーザー

AWS を使う単位は 「AWS アカウント」 で、契約・請求・リソースの境界 になります。アカウントを作ったときのメールアドレスとパスワードでログインするのが 「ルートユーザー」 で、請求の情報の変更、アカウントの閉鎖、サポートプランの変更、一部の S3 の設定など、IAM ユーザーではできない操作を含む 全権限 を持ちます。

そのため、ルートユーザーは日常の作業に使わず、MFA を設定し、アクセスキーは作らず、パスワードは金庫のように管理する のが原則です。AWS も、2024年5月に Organizations の管理アカウント、2024年6月に単独のアカウント、2025年6月にはメンバーアカウントを含むすべてのアカウントで、ルートユーザーの MFA を必須にしました。

実際の作業は IAM ユーザーか IAM ロール(第8回)で行い、複数のアカウントを部門・環境ごとに分けて Organizations(第8回)で束ねる構成が標準的になっています。1つのアカウントで全部を賄うと、権限の分離も請求の切り分けもできなくなります。

上段のピンクの枠「AWS アカウント 123456789012 ― 契約・請求・リソースの境界」の中に、人の絵の「ルートユーザー」と「メール+パスワードで作成される特権。請求変更・アカウント閉鎖・一部 S3 設定など IAM では不可能な操作を含む全権限」、「MFA 必須」「アクセスキー禁止」「日常利用しない」の3つの赤い箱があり、線の下に「日常の作業はこちらで」として「IAM ユーザー/SSO」「IAM ロール」「IAM ポリシー」の箱が並び、IAM ユーザー/SSO と IAM ロールから「操作」の矢印が「リソース」へ向かう。下段の点線の枠「AWS Organizations ― 複数アカウントを束ねる」では、「管理アカウント」から「OU: Prod」「OU: Dev」「OU: Sandbox」へ矢印が伸び、それぞれの下に「本番」「検証」「個人検証」のアカウントがある、アカウントとルートユーザー・Organizations の関係を示す図
  • アカウント=契約・請求・リソースの境界
  • ルートユーザー=全権限。MFA 必須・アクセスキー禁止・日常には使わない
  • 作業は IAM、複数のアカウントは Organizations で管理

アクセスの手段:コンソール・CLI・SDK・IaC

AWS を操作する手段はいくつかありますが、どの手段も最終的には同じ REST API を呼びます。

上段に「マネジメントコンソール(GUI)」「AWS CLI v2」「SDK(boto3 等)」「IaC CloudFormation・Terraform」の4つの箱が並び、それぞれから中央の「AWS REST API(HTTPS)」へ矢印が伸び、左の「IAM で認証・認可」から API へ点線の矢印、API から右の「CloudTrail に全記録」へ点線の矢印があり、API の下の枠「サービス」に「EC2」「S3」「VPC」「RDS」「Lambda」「CloudWatch」の箱が並び、左下に「CloudShell(ブラウザ内シェル)」の箱、その右に「$ aws sts get-caller-identity」「$ aws ec2 describe-instances --output table」「$ aws s3 cp ./log.txt s3://my-bucket/logs/」の3行のコマンド、一番下に太字で「どの手段も最終的には同じ API を呼ぶ。本番は手作業ではなく IaC が原則」と書かれた図
  • マネジメントコンソール:ブラウザの GUI。学習・確認・単発の作業向け。裏では API を呼んでいる
  • AWS CLI(v2):aws <サービス> <操作> の形式(例は下のコマンド)
  • SDK:Python(boto3)・Java・JavaScript など。アプリケーションから AWS を操作する
  • IaC:CloudFormation・CDK・Terraform で構成をコードにする(第12回)。本番は手作業ではなく IaC が原則
  • CloudShell:コンソールの中で使えるブラウザ上のシェル。CLI が設定済みで、手元に環境が無くても試せる
  • どの手段も最終的には同じ REST API を呼ぶ。API の呼び出しは CloudTrail(第11回)にすべて記録される
$ aws sts get-caller-identity          # 今どの認証情報で操作しているか
$ aws ec2 describe-instances --query "Reservations[].Instances[].[InstanceId,State.Name]" --output table
$ aws s3 cp ./log.txt s3://my-bucket/logs/

最初の aws sts get-caller-identity は、作業の前に「どのアカウントの、どのユーザー・ロールで操作しているか」を確かめるコマンドです。次のような JSON が返ります(値は例)。

{
    "UserId": "AIDAEXAMPLEUSERID1234",
    "Account": "123456789012",
    "Arn": "arn:aws:iam::123456789012:user/tanaka"
}

リソースの識別:ARN とサービスエンドポイント

AWS のリソースは、ARN(Amazon Resource Name) で一意に識別します。

上の濃い色の帯に「arn : partition : service : region : account-id : resource」、その下に色分けした「arn」「aws」「ec2」「ap-northeast-1」「123456789012」の箱と「instance/i-0abc123def456」の箱が並び、続いて「arn:aws:s3:::my-bucket/logs/*(S3 はバケット名で一意:リージョン・アカウントが空)」「arn:aws:iam::123456789012:role/AppRole(IAM もグローバル)」「arn:aws:lambda:ap-northeast-1:123456789012:function:hello」の3行と「IAM ポリシーの Resource に書く。* ワイルドカード可」、中段の枠「サービスエンドポイント」に「CLI/SDK」→「DNS 解決」→「ec2.ap-northeast-1.amazonaws.com」と矢印が並び、「VPC エンドポイントを使うと、この名前が VPC 内のプライベート IP に解決される(→ 第7回)」、下段の左の枠「グローバルサービス:IAM・Route 53・CloudFront・Organizations」、右の枠「リージョナルサービス:EC2・VPC・RDS・Lambda(S3 のバケットもリージョン)」がある図
  • すべてのリソースは ARN で一意に識別される。書式は arn:partition:service:region:account-id:resource
  • 例:arn:aws:s3:::my-bucket/logs/*(S3 のバケットはバケット名だけで全体で一意に決まるので、リージョンとアカウントが空)、arn:aws:ec2:ap-northeast-1:123456789012:instance/i-0abc123def456、arn:aws:iam::123456789012:role/AppRole(IAM はグローバルなのでリージョンが空)、arn:aws:lambda:ap-northeast-1:123456789012:function:hello
  • IAM ポリシー(第8回)の Resource で対象を指定するのに使う。ワイルドカード * が使える
  • サービスエンドポイント:API の接続先は https://ec2.ap-northeast-1.amazonaws.com のように、サービスとリージョンで決まる。DNS の名前解決のとおり、名前は AWS 側の IP アドレスに解決される。VPC エンドポイント(第7回)を使うと、この名前が VPC の中のプライベート IP に解決されるようになる
  • グローバルサービス(IAM・Route 53・CloudFront・Organizations)と リージョナルサービス(EC2・VPC・RDS・Lambda など。S3 のバケットもリージョンに作られる)の区別を意識する

名前解決の流れ(スタブリゾルバーからキャッシュ DNS サーバーへの問い合わせ)は、このブログの連載「DNS入門」第3回「名前解決の流れ」で詳しく扱っています。


料金の構成要素

AWS の料金は、おおむね 「コンピューティング(時間)+ストレージ(GB・月)+リクエスト数+データ転送(GB)」の合計 です。サービスごとに単価表があり、リージョンで異なります。

4つの枠が並び、「コンピューティング(時間):EC2・RDS・NAT:秒〜時間課金。停止で止まる(EBS は続く)」「ストレージ(GB・月):S3 は置いた分、EBS は確保した分。スナップショットも」「リクエスト数:Lambda・API Gateway・S3 の PUT/GET・DynamoDB」「データ転送(GB):イン無料、インターネットへのアウト有料(100 GB/月まで無料)。AZ 間・リージョン間も有料」、下段の赤い枠「見落としがちな費用」に「NAT 処理量 0.062 USD/GB」「パブリック IPv4 0.005 USD/h」「スナップショット」「Logs 取り込み 0.76 USD/GB」「詳細モニタリング」の5つの箱が並び、「見積は AWS Pricing Calculator。東京は米国東部より 1〜2 割高い。「入れるのはタダ、出すと高い」」と書かれた図
  • 時間課金:EC2・RDS・NAT ゲートウェイなど。EC2 は秒単位(最低60秒、Linux の場合)。停止中は EC2 本体の課金は止まるが、EBS は続く(第4回)
  • 容量課金:S3・EBS・EFS。GB・月で数える。EBS は確保した容量、S3 は実際に置いた容量。スナップショットも容量で課金される
  • リクエスト数:Lambda・API Gateway・S3 の PUT・GET・DynamoDB など
  • データ転送:インバウンドは無料、インターネットへのアウトバウンドが有料(東京:最初の 100 GB/月は無料(全リージョン合計)、以降は約 0.114 USD/GB)。AZ 間・リージョン間も有料(第12回)。「入れるのはタダ、出すと高い」
  • パブリック IPv4:2024年2月から、1アドレスあたり 0.005 USD/時(約 3.6 USD/月)。EIP も、使用中でも課金される
  • 見積は AWS Pricing Calculator(公式)で行う。東京は米国東部より1〜2割高い

見落としがちな費用は次のとおりです(東京リージョンの例、2026年9月時点)。

見落としがちな費用単価の例どこで扱うか
NAT ゲートウェイの処理量0.062 USD/GB第6回
パブリック IPv40.005 USD/時第6回
データ転送(インターネットへ・AZ 間・リージョン間)インターネットへ約 0.114 USD/GB、AZ 間 0.01 USD/GB(双方向)第12回
スナップショット容量に応じて第5回
CloudWatch Logs の取り込み量0.76 USD/GB第11回
詳細モニタリングメトリクスの数に応じて第11回

冒頭の2つ目の相談は、多くがこれです。検証で作った NAT ゲートウェイや EIP、パブリック IPv4 を持つ EC2 を 止めたり消したりせずに置いたまま にすると、触っていなくても時間で課金されます。


無料利用枠(2025年7月の改定)

AWS の無料利用枠は、2025年7月に仕組みが大きく変わりました(2026年9月時点の内容)。

上段のオレンジの枠「2025-07-15 以降に作成したアカウント」の中に、緑の枠「無料プラン:最大 6 か月・最大 200 USD クレジット(登録 100+所定の作業で最大 100)。尽きたらアカウントを閉鎖(90 日以内に有料プランへ移行しないと削除)。課金なし。Savings Plans・RI 等は使えない」と青い枠「有料プラン:従量課金(同じクレジット付与)。本番・長期利用向け」、中段の枠「常時無料枠(継続)」に「Lambda 100 万 req/月」「DynamoDB 25 GB」「CloudWatch 基本メトリクス」「CloudFront 1 TB/月」「SNS 100 万 pub」の5つの箱、下段の枠「2025-07-15 より前のアカウント:従来の 12 か月無料枠(t2/t3.micro 750 h/月 など)が適用」、一番下に「Budgets」の箱と「検証でも最初に上限アラートを設定する(→ 第12回)。「無料のはず」の請求は初学者の定番事故」と書かれた図
  • 2025年7月15日以降に作ったアカウントは、「無料プラン」か「有料プラン」を選ぶ 方式に変わった
  • 無料プラン:最大6か月、最大 200 USD のクレジット(登録時に 100 USD+所定の作業を終えると最大 100 USD)の範囲で使える。クレジットか期間が尽きるとアカウントが閉じられ(90日以内に有料プランへ切り替えないと削除)、課金は発生しない。Savings Plans・リザーブドインスタンス・一部の Marketplace の製品など、クレジットを一度に使い切るおそれのあるものは使えない
  • 有料プラン:従来どおりの従量課金。クレジットは同じように付与される。本番・長期の利用向け
  • 常時無料枠 は続く:Lambda 月100万リクエスト、DynamoDB 25 GB、CloudWatch の基本メトリクス、CloudFront 月 1 TB の転送、SNS 100万パブリッシュなど
  • 改定前(2025年7月15日より前)のアカウントには、従来の 「12か月無料枠」(EC2 の t2・t3.micro 750時間/月など)が適用される
  • 検証で無料枠を使う場合でも、Budgets(第12回)で上限のアラートを必ず設定する。「無料のはず」の請求は、初めての人の定番の事故

冒頭の2つ目の相談の続きです。有料プランを選んだアカウントや、改定前のアカウントでは、無料の範囲を超えた分はそのまま請求されます。アカウントを作ったら最初に Budgets を設定する、と覚えてください。


Azure との対応表①:全体像

ここまでの AWS の用語を、Azure の用語と対応させます。

AWSAzure補足
AWS アカウントサブスクリプションAzure ではさらに上位に テナント(Entra ID ディレクトリ)、下位に リソースグループ がある
(タグ・リソースグループは任意)リソースグループAzure ではすべてのリソースが必ずいずれかのリソースグループに属する。AWS の「リソースグループ」は任意のタグ集約
AWS Organizations管理グループサブスクリプションを階層化
リージョン/AZリージョン/可用性ゾーンAzure には「リージョンペア」(東日本⇄西日本)があり、一部サービスの DR に使う
マネジメントコンソールAzure Portal―
AWS CLI(aws)Azure CLI(az)/Azure PowerShell―
ARNリソース ID階層パス形式(/subscriptions/…/resourceGroups/…/providers/…)
CloudFormationARM テンプレート/BicepTerraform は両方で使える
ルートユーザー(相当なし。Entra ID のグローバル管理者+サブスクリプション所有者)Azure は ID 基盤が Entra ID に統合されている

いちばん違うのは、Azure ではすべてのリソースが必ずリソースグループに属する ことと、ID の基盤が Entra ID に統合されている ことです。AWS のアカウントに当たるのはサブスクリプションですが、ユーザーの管理はその上のテナント(Entra ID)で行います。


考えてみよう

  1. 自分のアカウントで aws ec2 describe-availability-zones --region ap-northeast-1 を実行し、ap-northeast-1a がどの AZ ID に当たるかを確かめてみましょう。同僚のアカウントと比べるとどうなるでしょうか
  2. 検証用のアカウントで、ルートユーザーに MFA が設定されているか、ルートユーザーのアクセスキーが残っていないかを確かめてみましょう
  3. EC2(パブリック IPv4 付き)と NAT ゲートウェイを1か月動かしたままにすると、何に料金がかかるでしょうか。AWS Pricing Calculator で見積もってみてください

ヒント:1は「AZ 名と AZ ID」、2は「AWS アカウントとルートユーザー」、3は「料金の構成要素」と「無料利用枠(2025年7月の改定)」の節を見直してください。


まとめ

  • AWS の基盤は リージョン ⊃ AZ ⊃ DC。日本は東京(ap-northeast-1)と大阪(ap-northeast-3)
  • 可用性の設計の基本は マルチ AZ。リージョン間は明示的に設計しないとつながらない
  • 東京など古いリージョンでは AZ 名と物理的な AZ の対応がアカウントごとに異なることがある。物理的な AZ を比べるときは AZ ID
  • エッジは「配信・名前解決を近くで」、Local Zones は「計算資源を近くに」
  • アカウントは契約・請求・リソースの境界。ルートユーザーは MFA・アクセスキー禁止・日常に使わない
  • 操作はどの手段も同じ API。本番は IaC、記録は CloudTrail。リソースは ARN で識別
  • 料金は時間・容量・リクエスト・転送の合計。「入れるのはタダ、出すと高い」、検証でも Budgets を最初に

次回は、コンピューティングの前編として、EC2 と Nitro System・Graviton、インスタンスタイプ、AMI と起動テンプレート、EBS とインスタンスストア、ログインの手段、IMDS を扱います。


連載「クラウド入門」全14回

  1. クラウドとは(定義・歴史・責任分界)
  2. AWSの全体像(この記事)
  3. コンピューティング 前編(EC2・Nitro・インスタンスタイプ・AMI・IMDS)
  4. コンピューティング 後編(課金と購入オプション・Auto Scaling・ELB・コンテナ・Lambda)
  5. ストレージ
  6. ネットワーキング 前編(VPC・サブネット・SG・NACL)
  7. ネットワーキング 後編(DNS・接続・Route 53・CloudFront)
  8. IAMとセキュリティ 前編(IAM・ポリシー・STS・ID連携・Organizations)
  9. IAMとセキュリティ 後編(KMS・シークレット・ACM・検知と防御)
  10. データベース
  11. 運用・監視・コスト 前編(CloudWatch・CloudTrail・Config・SSM)
  12. 運用・監視・コスト 後編(タグ・転送料金・コスト管理・Control Tower・IaC)
  13. Well-Architectedフレームワーク
  14. これまでのテーマとAWSの対応・まとめ

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